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第二十三話 受け継ぐ意志、守りたい未来①

last update 최신 업데이트: 2025-07-05 18:31:11

【二〇一六年 杏】

 修司の父親と話してから、私は修司に会うことができずにいた。

 スマホの通知は、数えきれないくらい溜まっている。

 その通知に並ぶ名前を見るたび、胸がぎゅっと締めつけられて、私は深い悲しみに落ちていった。

 修司は、何度も家に訪ねてきた。

 でも、私はそのたびに居留守を使い、新にも「いないって言って」と頼んだ。

 何度目かもわからないお願いに、新はいつも不思議そうな顔をしていたけれど、何も言わずに私の言うことを聞いてくれた。

 学校へは行っていなかったから、プライベートでさえ会おうとしなければ、修司に会わずに済んだ。

 私は外出もほとんどしなくなり、家に閉じこもる日々が続いていった。

 その間も、裁判は進んでいく。

 あれよあれよという間に判決は下り、父は冤罪の汚名を着せられたまま、無期懲役が決まってしまった。

 事件の真相を知りながら、何もできない自分を、私は責め続けた。

 苦しくて、心が壊れそうだった。

 本当は誰かに助けてって叫びたかった。

 普通なら、とっくに壊れていたかもしれない。

 でも、そんな余裕はない。

 私には守るべきものがある。

 ――新を守る。

 それが私の使命だと思っていた。

 父が守ろうとしたものを、今度は私が守るんだと。

 自分を犠牲にしてでも、父が守ろうとしたもの。

 それは、私たち。

 父が命がけで守り抜いたものを、今度は私が守り抜く。

 その決意だけが、私を支えていた。

 でも、本当は胸が張り裂けそうだった。

 どんなに心に言い聞かせても、抑えきれない感情。

 修司への想い――

 会いたくてたまらなかった。

 今すぐ抱きしめてほしいと、何度思ったかわからない。

 ……だけど、そんなことは許されない。

 許されないのだ、絶対に。

 修司のことを思えば、すぐに父の顔が浮かぶ。

 そして、私の中のもう一人
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댓글 (1)
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憮然野郎
杏のお父さんを無期懲役とは酷い... 警察も司法も名ばかりの見せかけの正義なんですね。 杏のお父さん、刑務所の中で居た堪れない思いでしょうね。 父自身だけの冤罪の問題では済まされず、 娘と息子が今どんな境遇に置かれているかと想像すると...
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